写真家の声 #20

「吹き込まれた命」

金 鋭氏

写真を始めて数年。夢中で撮り夢中でSNSのグループに投稿する。そんな日々が続いていた。父親(絵画)と共に親子展を開催する事に。覚悟を決めて初めての個展の準備に入った。

ギャラリーとの打ち合わせ。案内やDM。名刺やポスター。全てが一からの準備。初めての事が多く戸惑う。その中でも最大の懸念はプリントだった。これまでグループでの展示はあったが本格的な展示の経験はなかった。

プリントこそが個展の左右を決定する。そう思っていた。SNSを含めたネットで見ている写真とプリントされ展示されている写真は違う。どちらかがいい悪いと言う話ではない。データで見る写真。プリントされ展示される写真。それぞれに意味がある。個展は展示されている写真を含めその空間全てが自分だけの時間になる。

「プリントは命を吹き込む事」そう感じていた。サイズや用紙。額装を含めた加工。色味を含め全ての過程における作業はまさに吹き込まれた命そのものだ。プリントされ丁寧に加工された写真の数々は作品として命を与えられ歩き出し動き出す。

個展における作品25点を全てクリエイトさんにお願いした。フォトグラファーとして活躍している友人の進めもありまたこれまでの展示を含めその技術の高さは知っていた。撮ることは経験を積んでいたがプリントや加工については経験が多くない。丁寧に対応いただき全てにおいて満足のいく素晴らしい仕上がりにしていただいた。

写真は撮らなければ何も始まらないが撮るだけではない。プリントして加工して展示をする。そこには人が介在しデジタルとアナログがそれぞれ高い技術と経験に裏打ちされた体験によって融合し命が吹き込まれる。写真が作品になる。展示された写真は写真家の意図と共に世の中に向けて歩き出し動き出す。そして作品として見る人それぞれの思いの中で形を変えて行く。

命を吹き込む。吹き込まれた命。写真は奥が深い。

写真家の作品
写真家の作品
PROFILE

写真家の顔写真

金 鋭

1967年(昭和42年)生まれ。上海在住。
華僑三世。神戸生まれ神戸育ち。
東京カメラ部2018年10選。

「心の国境を越えて」
価値観が異なる日本と中国。人生の喜怒哀楽は国が違っても同じ。日本で生まれ中国で生活する華僑だからこそ伝えられるものがある。写真を通じて日本と中国双方の理解を深めたい。理解を深めることは互いを知る事。心の国境は越えられる。

写真との出会いは学生時代。フォトグラファーとして活躍する友人の勧めもあり2014年から上海を中心に本格的な撮影活動に入る。

写真を撮り始めていく中で華僑としての自分の生い立ち、祖国である中国での生活や情景をどう表現すればいいのか?何を伝えたいのか?また華僑である自分の目から見た上海はどう映るのか?試行錯誤を繰り返す。

写真を通じてエネルギー溢れる上海の現状や活き活きと生活している人達を自分なりの感性と表現で伝えたい。上海の人々との交流を含めより内面に迫りたいと上海で息づく人達を撮り始める。

「人を通じて街の情景を伝えたい。街を通じて人の息遣いを伝えたい」 モノクロームを中心に現在は上海を含めた中国各地及び生まれ故郷である神戸を中心に撮影。上海在住の写真家として活動の幅を広げている。