写真家の声 #9

デジタル銀塩プリントの
傑作は、
人工と自然の
共同作業によって
生み出される。

北島 敬三氏

クリエイトが、日本のデジタル銀塩プリント制作ラボの草分けであることは言うまでもない。
20年ほど前、私はデジタル銀塩プリントの制作を始めるにあたって、高度な技術をもったプリント・ラボとして、最終的に出会ったのがクリエイトだった。
デジタル銀塩プリントの草創期にあって、群を抜いた技術の高さと写真家の要望への対応の柔軟性は、他のラボよりもはっきりと抜きん出ていた。
爾後、私はすべてのデジタル銀塩プリントの制作をクリエイトにお願いしてきた。
デジタル銀塩プリントはインクジェットとは違って、あくまでTypeCプリントである。
つまり入力はデジタルデータでも、出力方式は印画紙現像なのだ。
インクジェットプリントのように染料や顔料を紙の上に吹き付けるのではなく、印画紙に塗られたエマルジョン(乳剤)が現像液と化学変化を起こして発色する!のである。
銀塩写真を制作した経験のある人にはよくわかっていることだが、エマルジョンの状態、現像液の状態、現像の温度や時間など、さまざまな要因によって微妙に味わいが出てくる。
プリントが仕上がってくるまでの期待や緊張感は、たとえば陶芸家が窯出しするときの興奮に近いのかもしれない。
デジタル銀塩プリントにおいては、人工と自然の共同作業によって傑作プリントが生み出される。
デジタル銀塩プリントは、本来の意味で“photography”なのである。

写真家の作品
写真家の作品
PROFILE

写真家の顔写真

北島 敬三(きたじま けいぞう)

1954年生まれ。1981年日本写真協会新人賞、第8回木村伊兵衛写真賞、第32回伊奈信男賞、第26回東川賞国内作家賞、2010年日本写真協会作家賞、2012さがみはら写真賞を受賞。
写真集『NEW YORK』、『A.D1991』、『Joy of Portraits』、近刊に『USSR1991』、『戻る沖縄』など。国内外で写真展を多数開催。現在、2001年に創設したphotographers’ galleryを拠点に、制作・発表。