大伸ばしプリントの魅力と
銀写真プリントの実力
(辰野 清氏)

デジタル時代になってプリントに対する重要性が高まっています。というのも、デジタルはデータであり、形のないものです。だから物体として残らないことへの不満が付いて回ります。プリントしてはじめて正しい姿が見られるわけで、物体があることで安心できるのです。また、プリントすることによって、写真そのものに対する価値も出てくるといえます。コンテストに応募するだけでなく、日頃からプリントにして残すというのが、写真をやっている者の使命ではないでしょうか。

写真というのは大きくすればするほど、細部を見ることができるわけで、作者の意図が伝わりやすくなります。私は風景写真を専門をしていますが、風景の繊細さを描写するには大きく伸ばすことが大事だと考えます。また、昨今の高画素時代においては、大きく伸ばさないと意味がありません。伸ばさないのであれば、コンパクトカメラでもスマホでもいいわけですからね。一眼レフを持ったら、自然風景でも街の光景でもカメラの描写性を活かして、しっかりプリントして見せることが大切だといえます。

プリントまで自分で手掛けるというのは、作家性を込めるのは重要なことだと思います。ただ、それには知識や技術も必要になってきます。もしそれがないのであれば、無理して自分でやらないほうがいい。技術も行動力も、出会った被写体もいいのに、プリントがダメで損をする人がたくさんいます。

だからプリントはプロに補ってもらいレベルの高い写真に仕上げればいい。銀写真プリントは印画紙自体が発色するので階調がものすごく豊かです。インクジェットは点の重なりで色を作る、その違いが細かいトーンの差になり、大きくするほど心に作用し、現場の臨場感が見る人に伝わるのです。あまり大きくプリントしたことがない人は、四ツ切りなどに伸ばしてみるといいでしょう。物体として、手から伝わるような感動を写真から得られると思います。あとは、思い切ってコンテストに応募して、自分の写真の力を評価してもらえば、写真がますます楽しくなってくるのではないでしょうか。

プロフィール

辰野 清(たつの きよし)
1959年長野県岡谷市生まれ。2003年第11回前田真三賞受賞。
2004年にインテリアクリエイター事業経営を経てフリーランスとなる。豊かな構成力と詩情溢れる作風で、日本の風景表現の物語性を追求している。写真講師としても定評があり実践的な指導をもとに多くの写真家を育成している。写真誌コンテスト審査員、カメラ雑誌の執筆、カレンダー、講演会、写真ゼミ講師、ツアー企画など幅広く活躍する。(公社)日本写真協会会員、日本風景写真協会指導会員、自然奏フォトアカデミー主宰。
写真集:「凛の瞬」(風景写真出版)
写真展:「渓水〜瀬音が聞こえる」、「和の香」、「森の呼ぶ声」「凛の瞬」。
主な著書共著:「超実践的フィルターブック」(日本写真企画)、「長時間露出の写真術」(日本写真企画)、「桜花を撮る」(日本写真企画)、「四季を撮る」(日経ナショナルジオグラフィック社)など多数。

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